駆け出しのフリーランス翻訳者は、その実績の少なさや知名度の弱さにより、売り込みが難しいと感じられることがある。そこでブランド構築が課題となる。
多くの場合、地道に案件をこなし、信頼を勝ち取り、安定させるというのが横道だ。しかし、より効率良くブランディングを行うことも可能である。
この記事の内容
フリーランス翻訳者としてブランド構築を行う最初のステップ
この記事の対象者
駆け出しのフリーランス翻訳者、現役の翻訳者
ブランド価値を構築するには、独自ドメインでホームページを立ち上げ、メールアドレスを設定し、詳細情報と記載して試訳を掲載せよ。
ホームページを立ち上げよ
「何を今さら、履歴書・職務履歴書があるではないか」と思われるかもしれない。しかし、現代ビジネスにおいて、ホームページを構えるというのは当たり前過ぎて語られることもなくなった。ホームページを持つメリットは大きく分けて3つある。
- 見込みクライアントがインターネット検索からあなたを見つけることができる
- 自分の詳細な情報をホームページ上に記載することで、無駄なEメールのやりとりを省くことができる
- 名刺にホームアドレスを書くことができ、新たなネットワーク形成が容易になる
見込みクライアントが「こんな翻訳者がほしい」という理由でインターネット検索から人材探索を行うのは日常茶飯事だ。そんなとき、あなたのページが出てくれば、その見込みクライアントは情報を見て必要に応じてコンタクトを取ることができる。
見込みクライアントは、フリーランス翻訳者を翻訳者登録サイトなどで見つけても、そこのプロファイルだけでは十分な情報を得られない。ホームページに詳細な自分が携わった過去のプロジェクト、得意分野、興味のある分野などを掲載しておくことで、無駄な質問メールを省き、すぐにメールで連絡して商談に移ることができる。
翻訳関連のイベントに出かけると、非常に多くの出会いに遭遇する。フリーランス翻訳者、翻訳会社、ツール会社、そのバリエーションは多様だ。こういった人々に配る名刺にホームページ情報があれば、相手は自分のタイミングでホームページ上の詳細情報を見ることができ、機会があれば別のネットワークへの拡散を行うことさえある。
ホームページのないサービスは看板のない店と同じだ。サービスを欲しているクライアントが存在しても、こちらが近づいていかない限り、そのサービスを見つけられず、依頼すらできない。World Wide Webはインターネットの電話帳だ。いくらでもビジネスチャンスが転がり込む見込みがある。
独自のドメインを取得せよ
これは「ホームページを立ち上げよ」の続きだが、ホームページのアドレスが独自のドメインではなく、無料スペースサービスではブランディング効果が薄れる。最近では、FacebookなどのSNSを利用したページもあるが、URLが長くなったり、URLに自分の名前に関連したワードがないなど、デメリットは多い。
独自のドメインを取得することで、たとえばホームページのアドレスを「http://www.nobi-nobita.com/」に、電子メールアドレスを「nobita@nobi-nobita.com」に設定できる。これだけでもフォーマルさをアピールできる。
- nobi-nobita123@yahoo.com
- nobita@nobi-nobita.com
これらの2つのアドレスのうち、どちらに「フォーマル感」を感じるだろうか。答えは明白過ぎて言うまでもない。
考えてみてほしい。あなたが2件のハンティングメールを受け取ったとする。1件目は、translate-good.comという翻訳会社のHRからのメールで、その差出人はjoey@translate-good.comとなっている。2件目は、translate-excellentという会社からだが、ホームページのアドレスがtranslate-excellent.yahoo.comで差出人のメールアドレスはandy@yahoo.comだとする。これだけの情報から考えた場合、どちらのオファーを受けたいだろうか。
ドメインは、自分の名前、サービス名などに基づいて設定すると良い。フォーマルさを崩さないためにも、nekochan-daisuki、pochi-inukouなど、関係ないドメインの設定は避けたほうがよい。
ドメイン取得からホームページ立ち上げまで
大まかな手順は以下の通りだ。
ドメイン取得→レンタルサーバーの契約→設定→ホームページ作成→公開
この記事では、安価で設定が楽なサービス、「ロリポップ」と「ムームードメイン」で説明を行う。ロリポップサーバーは月額100円からミニマムサービスを利用できる。駆け出しで、それほどホームページにお金をかけたくなくてもサイフにやさしい。また、気に入らなかった場合でも10日間無料お試しが可能なので安心だ。
ムームードメインは、最小45円からドメインの取得が可能。.comなどの末尾であれば、年間1,200円くらいだろう。ムームードメインのメリットは、プライバシー保護機能が無料で提供されており、登録者情報をムームードメインとして表示させることが可能なところだ。つまり、ドメイン情報を検索されても、自分の住所等がパブリックにさらされることはない。
まずはドメインを取得しよう。ドメインを取得することで、ホームページのアドレス(例:www.nobi-nobita.com/)、メールアドレスの@以降(@nobi-nobita.com)を設定できる。
ムームードメイン にアクセスし、[ほしいドメインを入力]の部分に希望のドメインを入力して検索する。たとえば、nobi-nobitaで検索すると以下のような結果が表示される。
「取得できません」と示されている場合は、そのドメインは既に他のユーザーによって取得されているため利用できないということだ。nobi-nobita.netであれば取得可能なので、[カードに追加] で購入に進めば良い。どうしてもnobi-nobita.comがいい場合は、少し変更を加えることで、取得可能かどうかを再検索するといいだろう。nobi2nobita.com、nobinobita.com、nobi3nobita.comなどを試すといい。
次に、実際にホームページの運営を行うためのサーバーをレンタルする必要がある。無料のホームページサービスでは、自分で取得したドメインを使用してアドレスを任意のものに設定することができない。また、サービスの安定性やその他設定(メールやデータベースなど)を考慮しても信頼できる有料サービスを使うほうがよい。
ロリポップにアクセスし、右上の [お申し込み] をクリックする。次に、自分に合った料金プランを選択する。
[ロリポップ!のドメイン] は、後でムームードメインで取得したドメインを設定するので、何を指定しても構わない。
登録が完了したら、『独自ドメイン設定』からドメインの設定を行う。
この後は、WorldPressなどを使ってホームページを作成すると良いだろう。ロリポップでは『WordPress(ワードプレス)簡単インストール』や『WordPress(ワードプレス)の設置』など、初心者向けのドキュメントも数多く提供しているため安心して運営を開始できる。
ちなみに、このサイトもムームードメイン+ロリポップサーバーで行っている。非常に優れたサービスで満足している。
ホームページで試訳を公開せよ
通常、トライアル(試訳)は、ベンダーと連絡してから、正式に依頼されて行うものだ。しかし、ホームページで、あらかじめこちらで試訳を用意してしまえば手間が省けることがある。これには、非常に大きなメリットがある。
- 自分の得意分野で試訳できる
- 自分の好きな部分を選択できる
- トライアル免除を受けられることもある
ここで注意しなくてはならないのは、ソーステキストの元を明らかにすることだ。また、よほどの自信がある場合を除き、ソーステキストに既に日本語訳が存在するものは避けた方が無難だ。
ソーステキストを選んだら、著作権の問題も確認した方がよい。一番無難な方法は、ホームページ上で掲載されている製品マニュアル等で、日本語訳が存在しないものだ。
Microsoftでは、人間が全く編集を行っていない機械翻訳による日本語ドキュメントを公開している。Microsoftは、アクセス分析を行い、機械翻訳でもアクセスの多いページはその後でポストエディットを行い、品質を向上させているという。ここにもチャンスはある。全く編集されていない機械翻訳のポストエディットを行い、それでポストエディットスキルを示すことも可能だ。くどいようだが、この場合もしっかりと元のURLを掲載し、「機械翻訳を読みやすく説明することが目的」や「試訳目的」などと明記する必要がある。あくまでMicrosoftの邪魔にならないようにしなければならない。
Microsoftのブログの機械翻訳も公開されている。
ホームページに試訳を載せる場合は、ソースのURLと文書の題名、会社名、その部分の引用であることをしっかりと記載する必要がある。著作権や転載に問題がありそうな場合は必ずソース元の会社に連絡を行い、許可を得てから行おう。
さいごに
ドメインを取得してホームページを構え、独自のメールアドレスを持つことだけでもブランディング構築を開始することができる。これは簡単なわりに効果が高いので、ぜひ試していただきたい。
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