フリーランスリンギストが受けるハラスメント

bully

セクハラ、パラハラ、モラハラ。日本ではよく「〜ハラ」という言葉を聞く。要するに、さまざまな嫌がらせのことだ。こういったものは、特に会社組織では問題視されているし、相談できるホットラインなどが設けられていることで対策がとられている。

ぼくらフリーランスの翻訳者はどうだろう。とんでもない嫌がらせを受けてもぼくらには相談できる場所はないし、基本的には誰も助けてくれない。だから、ぼくがこういうコンテンツを書くことで、その意識が広がればいいと思う。

ぼくはこれをトラハラ(トランスレーションハラスメント)と定義する。どうだ、いいネーミングセンスだろう。

レビューアーが受けるトラハラ

ポンコツテキストを送りつけて、それをレビューさせるのは典型的なトラハラだ。これは納品するほうも、それをそのままスルーする管理側にも問題がある。

中には、「レビューアーがいるんだから、ミスはレビューアーに任せればいい」と思っている人たちがいる。これは大きな間違いだ。レビューアーがいるからといって、見直しもしていないテキストを送りつけるのは嫌がらせでしかない。翻訳者はレビューアーのありなしに関係なく、品質に責任を持たなくちゃいけない。

へっぽこ翻訳者がへっぽこテキストを納品してくると、レビューアーの仕事はブラック化する。翻訳のやり直しに加え、さらにレビューをしなければならないからだ。こんなことを容認してはいけない。レビューアーがまだ新人だったり、経験が少なかったりすると、泣き寝入りになることが多い。あまりにもひどいなら話は別だけれど、ちゃんと文句を言っても少しくらいの手抜きなら、そのままになることは多い。

こういう状況が生まれるのは、会社やそのクライアントにとっても非常にまずい。レビューアーの仕事がこのようにブラック化すれば、レビューアーの仕事の品質が下がることになる。そして、全体的な品質の欠落につながる。

本来あるべき姿はこうだ。

翻訳者は訳して、自分で見直し、QAをやって納品する。そして、それでも起こり得るヒューマンエラーをレビューアーがチェックして直す。

間違いだらけでスタイルガイドも無視したようなものを送りつける翻訳者、それをちゃんと対処しないプロマネや管理側は、レビューアーにトラハラしてることをちゃんと認識しないといけない。

時間を考えない連絡

今ではグローバルに仕事をする人も多い。日本にいながら欧州、米国などから仕事を受ける。当然タイムゾーンが違うのだから、対応できる時間だって違ってくる。

中には、そういったことを全く考えないで、夜中の3時に電話してくるプロマネもいたりする。プロマネのくせに翻訳者のタイムゾーンを把握していないなんておかしい。夜中に電話してきて、「あ、寝てた?」なんていうのは鈍感極まりない。それで「寝てた」って言えば、「急ぎでやってもらいことがある」なんて言い出すしまつ。

プロマネなんだから、マネの部分をしっかりしないといけない。とんでもない時間に仕事の電話をよこしてくるなんてハラスメントでしかない。

とんでもない時間にメールを何回もよこして「すぐに返信しろ」なんていうのも同じ。フリーランサーをちゃんと人間として扱わないとダメ。

まずはトラハラに気づこう。そう、あんたがやってるのは立派なトラハラだ。

小さな頼みも積もれば山となる

最近は少なくなったけれど、「小さな頼み事」をしつこく頼んでくるプロマネがいる。「〜の日本語訳って何?」、「〜であってる?」、「〜の〜はどう思う?」。ぜんぶ、ぼくの仕事に関係ないやつをだ。そりゃあ、ひいきにしてもらっているクライアントのプロマネの頼みになら少しくらいは協力してやりたいと思う。けれども、こんなことを毎日数回やってくるんじゃ、トラハラでしかない。

まともな会社なら小さな頼みだって、「ミニマム払うよ」とか「小さなタスクまとめて1時間分、30分にして払うよ」とか言うもんだ。「スモールフェーバーだから、それくらいやってもらって当たり前」っていう態度はけしからん。やってやるのはこっちのほうだ。

ぼくは、英日だけじゃなく、中日もやることがある。ぼくの中国語はそれなりだし、プロマネが中華圏の人なら中国語でやりとりすることだってある。でも、ぼくが英日の仕事をしているときに、まったく関係ないプロジェクトの中日訳を、仕事としてじゃなくメールやチャットで質問してくるのは失礼だろう。

もちろん、ちゃんと時間で計算して正式な仕事として扱うなら別だが。

ぼくがここで問題視しているのは、「わかるからいいでしょ」、「ちょっとくらい、いいでしょ」っていうやり方。

連絡なしの支払い延滞

最近は、請求書や注文書も自動化されているし、支払いも自動化されているから少なくなったものの、平気で支払いを延滞してくるところもある。

いろいろな理由がある。

システム異常で」、「銀行側の問題で」、「経理の問題で」。

ぼくが問題だと思うのは理由じゃあない。

支払いが遅れるのなら、それを事前に知らせるのがベンダー側の義務じゃないか。それなのに延滞する連中の多くは、遅延が発生して、こちらが催促して初めてこの言い訳を始める。これは間違ってる。

会社なんだから、何らかの問題が起こることもある。それは皆同じ。ぼくは心が広いから、ちゃんと説明してくれれば、大抵のことなら待ってやる。

まともな翻訳者なら無断で納期を破って、「どうなってんだ」って連絡を受けて初めて「風邪ひきまして」なんてことないはずだ。「風邪をひいてしまって、どうしても納期を延ばしてほしい」。こうやって事前に連絡するはずだし、それが当たり前だと思われている。

「ぼくはいつも納期を守っているのに、支払いが遅れるのは何事か」と文句を言ったことがある。そしたら、「1週間くらいの遅れで文句なんて言うな」と言われた。これが「ギャフン」という、マンガでしか聞かないセリフを理解した瞬間だった。もちろん、もう一緒に仕事をするのはやめたけどね。

ぼくら翻訳者は締め切りを守ることが当たり前に期待される。それなら、ぼくらは同意した期間内に支払いを受ける権利がある。いや、そうでなければならない。支払いが遅れるのに連絡もなしだなんて、フリーランサーをナメきってる態度だ。トラハラだ。

さいごに

ぼくが紹介したストーリーだって立派なハラスメントだ。だが、ぼくらが受けるトラハラは他の社会的に認識されているハラスメントと違って軽視されがちだ。あなたが経営者、あるいはプロマネなら、よく行動を考えてほしい。翻訳者だって人間のリソースなんだ。あなたのハンディーツールじゃないんだ。

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