脱、思考停止トランスレーター

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Aiden
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翻訳者になって慣れてくると、その慣れからくる安心感で思考が止まってしまうことがある。気をつけよう。

駆け出しの頃というのは、何事にも慎重で緊張感を持って仕事をこなしていく人が多い。また、興味を惹かれることも多いので、リサーチにも熱心で、新たな手法も積極的に学ぶものだ。

ところが、1年もすれば慣れるもので、そこから停滞、もしくは失敗する人も見てきた。というわけで、こういった思考停止に陥らないためのヒントを紹介しよう。

この記事の内容

思考停止が起こる仕組みとその回避方法

この記事の対象者

やっと慣れて落ち着いてきた翻訳者
な〜んか、マンネリ化してきた翻訳者

翻訳者の思考停止とは

Aiden
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ベテランの目はごまかせないぞ!

レビューをやっていると、思考停止翻訳が目立つ案件をたまに見ることがある。ここで言う「思考停止翻訳」とは、翻訳が悪い意味でパターン化していることを意味する。これは「一貫性のある翻訳」だとか「スタイルの統一」といった話ではない。翻訳者の中で勝手に「お約束の訳」が生まれ、それを無意識に使ってしまうことで、思考停止トランスレートが起こる。

思考停止のサイン

✓一定の単語の訳が意味もなく鈍感に定着する
✓知識がずれている
✓思い込みミスが発生する

鈍感な定着訳

英日で例を挙げよう。駆け出しから落ち着いてきた翻訳者に多い定着訳に、「provide」や「support」といったものがある。作業が速くなったせいなのか、これらをとにかく「提供する」、「サポートする」と訳す。これは典型的な思考停止翻訳と言える。今時、機械翻訳でももっと良い訳を生み出してくる。

XXXは、〜をサポートしているため、〜という機能を提供します」 、「この機能は、XXXではサポートされていません。今後のバージョンでサポートが提供されます」。

これGoogle翻訳でも使ったの?と思ってしまう思考停止ぶりである。いやいや、今やTransformerなどの優れた機械翻訳はもっとできる訳を出してくる。思考を巡らせれば、「provide=提供」なんていう結論には至らないはずだ!気をつけよう。

知識のずれ

これは産業翻訳に多い。最近では、ソフトウェアもハードウェアもその更新速度は非常に速い。それに伴って知識もアップデートしなければならない。数バージョンも古い知識を使って現在の更新訳を行うのは非常に危険だ。

「〜ってなんですか?」。翻訳を行うにあたり、質問するためにクエリーを書くのはいいことだ。しかし、なんでもかんでも、自分でなーんも調べない、勉強しない、知識のアップデートしないでクエリを書きまくるのはハラスメントでしかない。

まずは自分で勉強しよう。調べよう。自分の知識を最新にアップデートして考えてから質問すれば、相手側の時間と労力も節約できる。

思い込みのミス

○○○の訳はXXXだ」。危険だよ、これ。しかも、これでミスをする人は、悪気がない場合が多い。わざとじゃない。うっかり、そう思い込んでいる。だからこそタチが悪い。まさに思考停止に陥っている。そして、その誤った訳を同じように使い、同じミスがプロジェクト全体に散らばる。

レビューをして気がつくのだが、この思考停止が起こっている人の訳は痛々しい。こういうミスは、プロジェクトの規模が大きければ大きいほど被害はひどくなる。「これって、どういう意味だっけ?」、「これって、そもそもこの訳であってるのか?」、「もう1度確認しておこう」。こういった思考が大切だ。

思考停止は、無意識に起こる、自分で理解していない間違いや思い込みのことだ。まずは、こういうことが起こりえるということを認識しなくてはならない。

思考停止に陥らないようにする方法

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Aiden
Aiden

思考停止を防ぐには、「いつものパターン」を疑うことから始まる。

思考停止防止

レビュー後のテキストやフィードバックを読む
ロールを変えてみる
イベントに出かける

レビュー後のテキストを見る

一番簡単な方法は、レビュー後の翻訳を見ること。

プロジェクトが終わって、レビューしてもらって何も問題なかった。はい終わり。次の仕事」。

これはもったいない。レビューには学べる要素がたくさんつまっていることが多い。無理でないのなら、プロジェクトマネージャーに頼んでレビュー後のテキストを見せてもらおう。どういった部分にエラーがあったのかを研究することが大事だ。

同じように、既に納品して翻訳が公式にリリースされた後も、せめて自分が担当した部分は見ておこう。製品マニュアルであれば、DTPが完了した後のものを見よう。ドキュメント翻訳であれば、リリースされたページのアドレスを教えてもらって覗いてみるといい。

CATツールのウィンドウからしか見ていないテキストは、実際の「現場」ではまた違って見るものだ。これを見て改善できる点を考え、次の機会に実行する。こうしていれば思考が停止することなんてないはずだ。

ロールを変えてみる

翻訳者はレビューアーの、レビューアーは翻訳者のキモチを理解できることが理想的だ。翻訳ばかりやっているなら、たまにはレビューアーの仕事も探そう。レビューを行うことで、「どういった間違いが起こるのか」、「どういった場所が勘違いしやすいのか」、「ありがちなケアレスミス」がわかるようになる。これは、逆もまた然りである。

また、レビューを行って「適切なフィードバックを提供する」ことも翻訳スキルアップにつながる。相手の不足している部分や、改善できる点などを論理的かつわかりやすく表現する。これがしっかりできれば、翻訳会社やメーカーから気に入られて、専属のQAになれるチャンスだってある。

レビューのプロセスを把握しておければ、次に自分が翻訳するときもレビューアーのキモチを考えた仕事ができるようになって、チーム全体の効率もアップする

イベントに出かける

いつもいつも朝から晩まで机にかじりつき、ただ仕事をやりまくっているだけ。これでは、本当に引きこもりだ。このような状況では、どうしても思考停止が起こりやすい。

翻訳関連のイベントは少なくない。大規模なものであれば、JTFのイベントや個人規模の勉強会など、そのバリエーションは豊富だ。

イベントに出かけることで、思わぬ発見があったりもする。また、現在の翻訳業界の企業規模の動き、テクノロジー、ソフトウェアと、数々の貴重な話を聞けるチャンスもある。カフェに出かけて仕事して、外に出た気になるのではなく、プロフェッショナルたちが集まるイベントにお金を払って出かけよう。自己投資すれば、モチベーションだって高まるはずだ

さいごに

翻訳という仕事は、慣れれば慣れるほど機械的なものになりがちだ。しかし、ぼくら翻訳者が考えることをやめてしまえば、それこそ機械に仕事を奪われてしまうだろう。ぼくたち人間は考えることができる。その「考えること」を武器できれば、うまく機械翻訳とだって付き合っていけるはずだ。

もう機械翻訳のことは「つかえない」だとか「関わらない」なんて言ってられないぞ。翻訳者の底上げは、もうとっくに始まっているのだ。機械翻訳同等、もしくはそれ以下の品質しか出せなければ、仕事はなくなる。それは当たりまえ過ぎる事実だ。

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