ゲーム翻訳者になるために

gear

以前に「ゲーム翻訳者のトライアルに落ちる3つの理由と対策」を書いた。これを見てもまだ「ゲーム翻訳者に、おれはなる!」というのならヘンタイで重傷だ。だが、おめでとう。きみは最初の適正テストには合格した。あとは準備するだけだ。

ゲーム翻訳者としてやってきて10年が経った。インターネット上には、ゲーム翻訳者に関する議論などの記事はあるが、実際にゲーム翻訳者の人が経験を元にゲーム翻訳者になる方法を説明している記事は少ない。というわけで自分なりのやつを用意した。

この記事の対象者

  • 既に翻訳者でゲーム翻訳に挑戦したい人
  • 駆け出しの翻訳者でゲーム翻訳分野に手を出したい人
  • 翻訳者ではないけど、ゲーム翻訳者になりたい人

この記事を読むとわかること

  • ゲーム翻訳者になるための準備の仕方
  • ゲーム翻訳者としての態度・姿勢・スキル
  • ゲーム翻訳者としてのキャリア開発

ゲーム翻訳者の需要

ゲーム翻訳者の需要は高い。実際、ゲーム翻訳者が不足していない翻訳会社は少ないのではないだろうか。ぼくが登録している会社でも常に「ゲーム翻訳者を紹介してください」だとか、「案件を手伝ってください」なんていう声がかかる。また、ぼくの(個人用の)ホームページやオンライン登録サイトから仕事の以来は常に絶えない。会社によっては、優秀なゲーム翻訳者を紹介して、その翻訳者がトライアルに合格すれば、報酬をくれるところだってある

ゲーム業界は衰退しない。する気配もない。昔は、日本がゲームをつくるトップだったが、今では世界中でゲームが生まれている。だからローカリゼーションの需要も増える

ゲーム翻訳者が不足する理由は、おそらく単純なパズルゲームなどは除いて、オタク要素の強いゲーム(FPSやファンタジー、SF)は、これらを好きで、常にプレイしているような人じゃないとできないという制限もある。そういったゲーマーは翻訳者にはならない。ゲーム好きな人はゲームをプレイするものだから。

最初に何をするべきか

おすすめな方法は、ゲーム翻訳をメインに扱う翻訳会社に翻訳者として登録することだ。ゲームメーカーに直接登録するのもいいが、これは少し敷居が高い。ゲーム翻訳者として経験を積んで、履歴書や実務翻訳履歴が立派になってくると、ゲームメーカーから直接声がかかることが多い。

ゲームメインの翻訳会社を選ぶ理由は、当然だが、ジェネリックな翻訳会社に登録するよりも、ゲーム案件が多いことだ。ゲーム特化なのだから、ゲーム案件がゴロゴロしている。

ゲームを主に扱う翻訳会社をいくつか紹介しておこう

  • Keywords Studios(ゲームコンテンツ開発、QA、エンジニアリング、ローカリゼーションを扱っている)
  • Shentloc(香港に拠点を置くゲームローカリゼーション会社。大きな案件も多い)
  • Lionbridge(ゲームメインではないが、ゲーム案件を多く扱っている)

ゲーム翻訳者になるにあたり、もうひとつやっておくとよいことがある。それは、ベテランのゲーム翻訳者とつながりを持つこと。そして、情報をもらうことだ。現在はインターネットの時代だ。SNSやWeb検索すれば、いくらでも翻訳者は見つかるだろう。その中で、メールを送れば返事をしてくれそうな人は普通にいるはずだ。Twitterにだって、Aiden Pearceをはじめとする、優秀なゲーム翻訳者がたくさんいる。思い切って連絡してみよう。良き仲間と出会えるかもしれない。

経験がない、経験が少ない

first thing

募集の多くが経験者を対象としている。経験がなくては、ゲーム翻訳者として登録できない場合も多い。ゲーム翻訳者として仕事をしなければ経験を得られない。この無限ループに陥ってしまう。これでは無理ゲーだ。

経験がないのなら、まずは無料ゲームやインディーズゲームプロジェクトに参加するといいSteam上には、さまざまな弱小ゲームプロジェクトがある。Early Access(早期アクセス)のゲームなどをみつけて、開発者に連絡してみるとよいだろう。ボランティアで貢献したり、非常に安価なオファーをすれば、パートナーとなれる可能性もある。

また、オープンソースのゲームプロジェクトに参加するものひとつの手だ。Unix/LinuxオペレーティングシステムのデスクトップGnomeKdeには、Kde GamesGnome Gamesといったゲームパッケージもある。そういったゲームの翻訳はコミュニティがやってるから、そこに参加すれば立派な経験を積むことができる。

これらの方法では、すぐに通常レートの報酬を得られない。ただし、経験は非常に貴重な財産となる弱小プロジェクトであったが後で人気が急上昇して、超有名ゲームになる可能性だってあるし、そこに自分の名前が書かれるのは非常にオイシイことだ。翻訳会社を通せば、自分の名前が載ることなんてない。手柄は丸パクリされるのだ。目先の利益を求めるな!ゲーム翻訳者への道は長いのだ。

トライアルを受ける

trial

ゲーム翻訳者として、ベンダーやメーカーに登録するには、当然トライアルに合格する必要がある。詳細は、「ゲーム翻訳のトライアルに落ちる3つの理由と対策」を参照されたい。

今回の記事ではトライアルで重視されるところを簡単にまとめる。

  • 流暢さ。自然な日本語であること。
  • 意訳力。ゲームでの会話などは、直訳するとぎこちないものが多い。これをうまく翻訳しなければならない。
  • オタク知識。ゲームといえども、最近のゲームは非常にリアリティを追求している。たとえば、FPSでの重火器。これらは実際に存在するものが登場するため正しい用語や表現を知り尽くしている必要がある。
  • キャラクターになりきった訳。RPGでは、キャラクターの性格を適格に表現できなければ、そのゲームが台無しになる。

これを練習するには、まだ翻訳されていないゲームからテキストをWikiなどで取ってきて、翻訳してみるのがいい。そして2〜3日経ってから自分でレビューしてみよう。フレッシュな気持ちで訳文を見ることができる。それで、修正した方がよい場所などを考えるといい。

日本語版のない弱小ゲームプロジェクトには、Wikiページを立ち上げる人たちもいる。これは公式の翻訳がないということで、日本語パッチを自分たちでつくりだすようなプロジェクトだ。ぼくの記憶が正しければ、World of TanksKenshiなどのゲームは最初は翻訳が存在しなかった。だから、Wikiページでゲーマーによって翻訳されていた。今となっては人気が出たので、翻訳会社に外注されているが。そのようなコミュニティであれば、実務経験がなくたって、熱意とそのゲームを愛する心があれば参加できる。ぜひ探してみるといいだろう。

必要なコミュニケーション能力

communication

これはゲーム翻訳に限った話ではない。しかし、特に、ゲーム翻訳のマネジメント側がいいかげんだったり、クライアントが翻訳者のことなど考えないとき、高いコミュニケーション能力が必要となる。

どういうことかというと、クライアントからテキストを丸投げされるときがこれに当たる。非常に厄介だ。たとえば、会話のテキストがあるのに、誰がしゃべっているか、つまり話し手が記されていないことがある。会話なのに、テキストが順番に並んでいないことがある。このように問題を取り上げればキリがない。

このような状況において、自分がどのような情報を必要としているのかを、わかりやすく、簡潔に、そしてすばらくメールで伝えられなくてはならない

セリフのテキストに名前が入ってないから翻訳しにくい

これでは伝わらない。

セリフのテキストは、その話し手ごとに分けて、名前を記述してほしい。会話の選択によって進み方が違う場合は、フローチャートのようなもの準備してほしい」。

このように明確かつ簡潔に要求をしっかりと伝える必要がある。メールのやりとりを繰り返すと時間ばかりかかり、作業が遅れることになる。

大規模な案件ともなれば、複数の翻訳者と作業を行う。このときにも、チームと連絡を取り合い、全体的な一貫性や用語、キャラクターの性格などについて詳細に文章で伝えられなければならない

必要なハードウェア

hardware

ゲーム翻訳者は、他の翻訳者と違い高額な施設投資を行わなければならない。しかし、ハードゲーマーであれば、あえて新しく用意するものはないだろう。さまざまなゲームをプレイできる環境がそろっていればそれでいい。

今すぐ施設投資が難しいという人もいるだろう。最近では、モバイルアプリの翻訳需要も高いので、すぐにハードが揃わないのであれば、モバイルアプリから始めてもいい。これならiPhoneやAndroid端末を持っていればいい。

本格的なゲーム翻訳といえばPCゲームだ。大規模なPCゲームにはマシンパワーが求められるので、それなりのハードウェアが必要となる。また、チートエンジンなど、開発者向けのツールを同時に動かさなければならないこともあるので、容量とRAMは十分にあったほうがいい。

PCゲームの翻訳をやるなら、ゲーミングPCを用意する必要がある。その構成例を示そう。

CPU: Intel Core i7 8809K
RAM: DDR4: 16GB
Video: Nvidia GeForce GTX 1080
SSD: 512GB
HDD: 2TB

このくらいの構成なら、おそらく18万円程度でAmazonなどで手に入るだろう。おすすめPC構成については、後ほど別の記事で詳しく説明する。PCゲームでのスペック優先順位は、ビデオカード→SSD→RAM→CPUだ。CPUが遅すぎるのはまずいが、それなりであれば問題ない。PCゲームで一番重要なのはビデオカードだ。これは心臓といってもいい。

また、出先でも作業する必要があるとなれば、ゲーミングノートPCもあると重宝するが、これにはさらにコストがかかる。これについても、別の記事で詳しく説明する。

ゲーム翻訳脳を形成する

brain

ゲームをプレイできるハードと、翻訳者としての心構えだけあってもゲーム翻訳はできない。ゲーム翻訳者のスキル・素質・姿勢が必要となる。これらを身につけるには、ゲーム翻訳脳をつくりだすためのトレーニングが必要だ。ここでは、いくつかのカテゴリに分けて説明を行う。

ゲーム翻訳特有のスキルを身につける

一番良い方法は、海外のゲーム(オリジナル)をプレイすること。大手のゲームなら、それなりの訳が用意されている。また、同じように翻訳版もプレイする。そして、「自分だったら、こう訳す」といったことを常に考えながらプレイしよう。気になるところがあれば、書き出しておこう。あとで翻訳版・原板をゲーム実況などでチェックすればいい。

小説を読む

小説は想像力を鍛えるのにすばらしい教材となる。小説は映画やアニメと違い、状況を字だけで想像しなければならない。この力が優れてくると、自分だけの世界を頭に描くことができる。これは時として、最新技術を駆使して制作されたグラフィックをも上回る。読書家になろう。

音楽鑑賞

音楽にはストーリーがある。その作曲者がどんな想いで作曲したのかはそれほど重要ではない。十分で自由に考える。ここでの鑑賞とは、「暗い曲」、「楽しい曲」、「速い曲」といったことではない。ストーリーを考えだす必要がある。音楽を分析的に聴く耳を鍛え、そしてじっくり想像力を働かせよう。絵やストーリーを紙に書き出して、しばらく経ってから自分で見てみるといい。ここで重要なのは「うまさ」じゃない。表現力だ。

ゲーム実況鑑賞

ゲームの感じ方を養う上で重要となるのは、「他人はどう感じているか」を知ることだ。同じゲームでも、さまざまなゲーム実況を見ることで、それぞれのリアクションや想いを知ることができる。これは無料でいつでも得ることができるので非常に価値が高い。また、視聴者のコメントなどにも感想があったり、自分とは違った感受性に触れることができることもある。

さいごに

ゲーム翻訳者になりたくなくなっただろうか。それでもいい。ゲームというものは、プレイを楽しむものだ。何か質問があればコメント欄で。気が向いたら返信するかもしれない。

それでは、さよなら、さようなら、さよなら!

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