レビューの心得

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Aiden
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「翻訳者志望だけど、レビューの仕事もやったほうがいいの?」という質問は多く見られる。当然、よい経験になるので、やったほうがいいのだが、心得ておくべきことがある。

翻訳者に成りたてのころや、まだレビューの経験が少ないと、どうしてもコツが見えてこないものだ。ここでの心得とは、「指示に従う」、「誤字、脱字を正す」、「レビューのワークフロー」といった内容は扱わない。これらを当然にこなし、それプラスで心に留めておくべき点を説明する。

この記事の対象者

新米レビューアー
既に翻訳者、駆け出しの翻訳者でレビューを上手にこなしたいと思う人

この記事の内容

レビューを行うときに心に留めておくべき3つのポイント

レビューの目的/理由を明確にせよ

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Aiden
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レビューはなんのためにやるのか」、詳細な理由はプロジェクトによって異なる可能性があるので、クライアントにきちんと確認すべきだ!

レビューなんて、ミスをなくすためにやるに決まってるじゃないか」と思うかもしれないが、クライアントの顧客が提供するサービスによって定義が違うこともある。

クライアントからレビューの実際のプロセス以外の説明がないのなら、それについて質問したほうがいい。「なぜレビューを行うのか」。クライアントによる要求なのか翻訳会社のパッケージなのかまたレビューだけの外注なのか

クライアントの顧客の要求であれば、その顧客がレビューに求めるものを把握して、それを交渉に含めるほうがいい。全体的なエディット(編集)を求めているのならば、それはレビューではなく、別の作業になる。その場合は、時間も費用も別になるので、改めて交渉しなければならない。

「ネイティブによる翻訳 + ネイティブによるチェック」というパッケージを翻訳会社が提供している場合は、翻訳会社のやり方に従う必要がある。説明や注意書きをよく読み、そして疑問があれば質問しよう。

レビューのみの外注であれば、なぜレビューを外注しているのかを知っておくといい。クオリティがヒドイからレビューであれば注意が必要だ。レビューという作業で手に負えないものであれば、改めて交渉が必要となる。その場合は、仕事を受けた時点で全体的な品質をチェックして、本当にレビューにふさわしい仕事であるかを判断しなくてはならない。

ポイント

まずは目的/理由を明確にし、必要であれば適切な交渉を行う

100%疑え

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Aiden
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レビューアーは「ミスのピックアップアーティスト」だ。「必ず間違いはある」。レビューはそれが前提で始まるのだ。

〜さんの訳なら安心だ」、「〜さんの仕事は初めてだから心配だ」。こういった先入観は捨てる必要がある。たとえ、超有名翻訳家の先生が訳したものでも、レビューを引き受けるからには、絶対に間違いがあるものだと思って作業に取りかかるほうがいい。

レビューを行うからには、徹底的にミスを洗い出すという覚悟が必要だ。

思い込み訳はないか」、「専門用語のミスは?」、「いや、もっと単純なタイポや変換ミスは…?」という基本的なものから、「この訳はこれであっているのか」、「代名詞の参照が違わないか」、「この日本語表現、漢字の使い方は正しいのか」。すべて疑え!!

この「疑いモード」での作業は、慣れが必要になる。あまりにも慎重に作業してしまうと、時間ばかりが経過してレビューのタスクとして成立しなくなる。

良い練習方法がある。Webには素人が書いたブログからプロが提供するニュースサイトの記事、コラム、エッセイであふれている。このような記事を読む際に、レビューやプルーフリーディングを行うつもりでミスをたたき出してみよう。カジュアルなブログであればあるほどタイポや文法ミスがあるものだ。新聞会社の記事には、ミスは少ないがゼロではない。そうやって目利きを養うのもひとつの手だ。

レビューは難癖をつけるものじゃない。間違いを見つけて、それがそのまま外に出てしまうことを防ぐ手段だ。もう外に出てしまっていても、それを修正できるのは感謝されるべきことだ。ミスを見つけて報告してあげよう。十中八九は喜ばれる。まぁ、中にはキレるヤツや、無視するヤツもいるだろうけどね。それはそれで、先へ進もう。きみはステキなお手伝いをしたんだから。

ポイント

誰の訳だろうと、どんな訳であろうと、レビューするからには100%疑う必要がある

別の表示形式でプルーフリーディングせよ

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Aiden
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表示形式を変えるだけで、見えなかったものが見えたりもする。

CATツールのウィンドウからでは、見えないものがある。そこで、少しでもよいので環境を変えてみる。すると、思わぬミスや違和感などに気がついたりするものだ。

一通りレビューを終えたら、タブレットデバイスにファイルをコピーして表示させてみよう。また、短いものであれば印刷して読み直してみるのもいい。

この別の形式で表示して読む「リーディングモード」では、いつものCATツールや文書作成ツールでの「作業モード」とは雰囲気が変わる。そのため、「リーディングモード」ならではのことに気がつくことがある。

たとえば、1セグメントずつエディタで読むという「作業モード」では、どうしても前後とのつながりや、流暢さに対する注意がおろそかになる。

しかし、「リーディングモード」では、セグメントラインやツール等がなくなり、文章だけの自然な形になる。そうなれば、全体的なつながりや流れに気を配ることが可能になるのだ。

ポイント

いつも見慣れている表示形式を変えるだけで見えてくるものがある

さいごに

経験豊富なレビューアーは、自分なりのレビューポリシーを持っているものだ。今回紹介したものは、その一部にすぎない。せぎ自分ならではのルールやポリシーを探してみてはいかがだろうか。

理不尽にもレビューには、スピードが求められる。そういった意味では、翻訳よりも大変なのかもしれない。

さいごのさいご

ミスを報告するときにはやさしくやろう。「ここ間違えてるぞ、このボケナスがぁ!」っていうと傷ついちゃうでしょ?「〜って勘違いしやすいですよね。ボクもこういうミスやっちゃうことあるんですけど、お互い気をつけましょうね」っていうスタンスを出すとトラブルも少なくなるよ。マジで。納期が厳しかったり、急いでいたりすると、ついつい乱暴な言い方になっちゃったりもするんだけれどね。

コメント

  1. […] 「レビューの心得」でも書いたが、フォーマットが違うだけでも見え方が違うので、可能であれば印刷したり、タブレットにファイルを移動させ、頭を「リーディングモード」に切り替えて文書を読む。 […]

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